地域社会において多世代コミュニケーションを円滑に動かすために「昔話の共有」という手法があります。昔話における「昔」の定義は絶対的なものではなく、「20年前」という数値であったり、「わしが中学生の頃」というその人にしか通じない尺度であったり、語り手の主観によりゆれ動きます。そのため、語り手と聞き手の尺度が異なるとなかなか話がかみ合いません。
しかし噛み合わないといっても、どんな「昔話」であっても共通するのは、語り手が「たしかにその時代に生きていた」というリアル。聞き手が語り手のリアルを受け取りために必要なのは語り手の「昔」に焦点を合わせること。
そのためのツールとして、20~60年前後の歴史を3世代程度のくらしの期間が見える過去を「近過去」と定義し、語り手と聞き手を繋ぐ共通言語とすることを提唱します。
「近過去」を共有することで、よりスムーズに多世代コミュニケーションを図ることができるのではないでしょうか。
2023年4月 「近過去」提唱者 野村 泰介
明治以来150年の歴史を持つ奉還町商店街、ここ10年で世代交代が進み、新規事業参入者や商店街で活動する学生増えています。2005年、経産省より「がんばる商店街77選」に選ばれ、地域活性化事例として注目されましたが、その当時、中心となっていた商店主の多くは高齢のため店を畳んでいるところも少なくありません。一方、昔からの住人と新規参入者や学生との交流は薄く、わずか15年ほど前のことながら奉還町商店街活性化のプロセスは引き継がれておらず、歴史を持つ商店街でありながらレガシーを継承した商店街づくりができているとは言い難いです。その原因としてまちのくらしに直結した20~60年前後「近過去の歴史」が旧商店主と新規参入者に共有されていないことにあると考えました。
奉還町商店街に関わり始めて日の浅い人々が、自分たちが参入する以前「ちょっと昔のまちの歴史」=近過去の蓄積を知ることで、先の世代が築いたものを未来の商店街づくりに活用することができるのではないでしょうか。また、近過去マップ制作のプロセスにより、普段交流する機会の少ない商店街に関わる先輩世代と新世代をつなぐことが可能であると考えています。
プロトタイプアクションとして、2022年度、岡山市北区桑田中学校区で10代から80代の多世代による「現代と近過去を行き来するスゴロクゲーム」制作ワークショップを企画しました。この実践により「近過去の共有」が多世代交流に有用であることがわかりました。
2023年 4月23日 |
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